緒(いとぐち)
夫色(そのいろ)に種ゝあり就中(なかんづく)鼡色ハ五色の外に好ミにして亦天然の
色なれバ三枝の礼ある鳩羽鼡(はとばねつみ)も迷へど風に靡(なび)くてふ楊鼡(やなぎねずみ)
の秋さりて散るハうたてき薄鼡はじめハついしたころび寝に
朝葱鼡と思いしも深くなるほど濃鼡人目の責を憚りて
互に志のび藍鼡末ハどうせう高野鼡とはまり込だる濁(どぶ)
鼡こゝらが色の要にて彼豆盗児(どろぼう)が暗闇に無理往生の鼡鳴
は塞(まがひ)鼡の変色(かわりいろ)是色本の外なるべし遮暮(さぐれ)とろぼうの泥に
因(よる)田染も色ハ鼡なれバ傍天然の色といはん乎噫
丁巳年 初春ごろ満ゝたる淫水を馬汗石(すずり)に滴(たら)して 暮朴斎述